自動化による業務効率化に貢献した従業員を表彰、ボッシュ初のアワード開催
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ボッシュではDXの一環として、各部門でのオートメーション化を進め、これまでに100を超えるボット(自動化アプリケーション)を開発してきました。従業員一人ひとりの活動を評価するために2022年に創設されたのが「オートメーションアワード」です。さらなる業務効率化への取り組みとアワードの意義について、主催者と受賞者が語ります。
田中 剛
- 自動車ビジネスドメイン(BBMドメイン)での業務プロセス全般を運用するグローバルチームのグループマネージャとして、自動化などのデジタル案件に関わる導入や、社内業務プロセス自動化(プロセスイノベーション)と運用面での安全な権限管理や、それに関わる活動を担当している。
増田 美保子
- オートモーティブアフターマーケット事業部で、マーケティングなどさまざまな部門を経験し、プロジェクトマネジメントも行う。2022年4月にロジスティクス事業部へ異動し、ゼネラルマネージャーを務める。
相田 博志
- 1991年入社。生産管理部門で経験を積み、現在はシャシーシステムコントロール事業部 アクティブセーフティ部門 栃木工場 生産管理部に所属。負圧センサの海外顧客担当を経て、輸出グループを含む出荷系全般の効率化活動を担当している。
豊国 瑠美
- 2013年入社。産休・育休期間を経て栃木工場から、2021年1月に社長室へ異動。2022年4月からボッシュジャパンのオートメーション活動推進をけん引するコアチーム側に参加し、Awardや社内外コンテンツの準備、そして自身が扱う定型的な社長室内業務の自動化のため日々奮闘中。
トップのメッセージに応えた開発、総勢34個のアプリケーションを評価
人が関わる社内業務の中で、品質、スピードを上げて処理するためにかかっていた作業時間。それが要因となり新しいことに触れる機会や、挑戦ができなくなる職場環境を脱却する──自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一手として 、ボッシュでは2018年から本格的に社内業務プロセスをフォーカスしたプロジェクトを進めてきました。
そのひとつが、ボットを用いて業務を自動化するオートメーションです。田中は、自動車ビジネスドメイン(BBMドメイン)業務プロセス管理部で、各部門が進めるオートメーションのプロジェクトをサポートしてきました。
田中 「2018年からの活動はどちらかというとボトムアップでした。コアチームに所属する少数が詳細を理解し、開発や運用に必要なフレームワークをデザインしつつ、希望者へ地道な勉強会を開きながら、必要に迫られて開発を進めるケースが多く、全社的に均一に浸透しているとは言えない状況でした。しかし社内コミュニティが順調に拡大し、成果を積み上げてきていました。
2020年の夏にトップマネジメントからの合意を得る形で、オートメーションに関してターゲットを事業部門と共有することとなりました。また、関心を持つユーザ、開発者など、グラスルーツ(草の根)がより部門で均一に増えていくことを狙って、これまで育成していたコーディネーターが各部門にアサインされることについても承認され、そしてねらいに合わせた活動やイベントを共に推進できるようになりました。
活動全体がトップダウンとボトムアップの両輪で動くようになったんです。2020年の末には、各部門で40個のボットが稼働するまでになりました」
社内の体制が揃ったその翌年の2021年の1月、日本のボッシュ・グループのキックオフで代表取締役社長のクラウス・メーダ―が、“2021年末までに100個のボットを開発する“という目標を発表しました。それをきっかけに、各部署での開発もさらに加速していきました。
田中 「100個以上のボットの稼働を達成するため、私たちコアチームも必要な準備をしてきましたが、それ以上に現場の多くの方が、情熱をもって取り組んでくれました。トップのメッセージに応えようと頑張ってくれた方々の活動を、全社に伝えていくことも重要だと考え企画したのが、今回のオートメーションアワードです」
2021年の12月に発表されたアワードは3部門に分け、評価しました。自動化の成果を評価する「ユースケース」、開発スピードやアプローチなど開発者の力を評価する「開発」、上層部や現場での調整などに尽力したコーディネーターを評価する「リーダーシップ」。ユースケースだけではなく、それを生み出す開発者や、プロジェクト全体をけん引するコーディネーターにも焦点が当てられています。
田中 「アイデア、技能、組織の調整は、どれも開発にとって重要な要素です。そこでそれぞれを評価しようと考えました。募集は短期間でしたが、6部門から合計34個のアプリケーションの応募がありました。『チームの仲間が頑張ってくれた』という推薦が多く、プロジェクトが浸透してきていることを感じました」
審査の上、9組11名がファイナリストに上がり、最終的にはユースケース1件、開発1件、リーダーシップ2件が受賞しました。
田中 「受賞者の大半はITの専門家ではないうえに、理系だけでなく文系出身者もいます。ただそれぞれの受賞者は、日々の業務を深く理解しており、そこにどう自動化ツールを取り入れ、業務を効率化させるかを辛抱強く考える力を持っています。
また、開発作業の場合、“作りたいものと期限があるから学習を始める”というくらい目的や推進力が皆さんとてもはっきりしていました。非常に熱量が高い2021年の活動だったからこそ、甲乙つけがたかったのですが、ゼロからスタートして、周囲を巻き込み、開発を手掛け、実際にアウトプットにつなげたプロセスも含め評価しました。みなさん、意識を高く持ってDXに取り組んでくれたことは、運営側としてうれしく思います」
煩雑な業務を整理し、RPAアンバサダーと共に458.3時間の労働時間削減を達成
オートモーティブ アフターマーケット事業部の増田は、リーダーシップ部門の受賞者の一人です。事業部全体の自動化を推進し、6つのボットで458.3時間の労働時間削減を成功させました。
増田 「オートモーティブ アフターマーケット事業部の業務は市販のビジネスのため、業務の多くにお客様とのやり取りがあります。もちろんERPやSAPなどの基幹システムは導入していますが、問い合わせ対応やレポーティング業務では、基幹システムから情報をダウンロードして分析する、レポートをダウンロードしてお客様のサイトにアップするといったオペレーションが発生します。
これらの業務は非常に多岐にわたり、時間がかかっていたんです。そこでこうしたマニュアルワークを分析し、自動化を進めていきました」
たとえば、お客様の受注状況をダウンロードしてカスタマーごとに分け、他の情報を追加してレポーティングする業務では、ダウンロードだけで1社につき30分~1時間ほどかかります。お客様は約50社あるため、それだけでかなりの時間を費やしていました。
この作業をボットを用いて夜間のうちに処理することで、大幅な時間短縮を実現したのです。このような課題を一つひとつ抽出し、どの作業が自動化できるかを細かく検証しました。
増田 「どこまでを自動化するかという判断が重要なので、成功させるには業務プロセスをしっかり理解する必要があります。そこで事業部約150名のなかから10名のRPAアンバサダーを設け、各部署の効率化のアイデアを集めるところから始めました。
アイデアを検証する中で、プロセスの不備が見つかり、プロセス自体を見直した業務もありました。ゼロベースから取り組んだことで、私自身、メンバーが時間をかけて煩雑な業務をしてくれていたことを理解できましたし、見えない不具合がたくさんあることにも気づけました」
プロセス管理部の田中を招いて、説明会を実施しながら、プロジェクトを進めたといいます。
増田 「私は自分の手でシステムを開発することはできませんし、改善のヒントもメンバーが示してくれました。私はそのアイデアを集め、まとめる役割を担ったのだと思っています。
ただ幸いなことに私は、これまで複数の部署をまたいでこうしたオペレーションを経験していたので、さまざまな立場からの視点で業務を理解していました。そこがお役に立てたところだと思っています。ですので、今回のリーダーシップ部門の受賞は、素直に嬉しかったです」
業務品質も向上、売上計上における19ものステップを1ステップに
「ユースケース」部門を受賞したのは、栃木工場で物流を担当する相田です。相田が手掛けた自動化は、製品出荷後に、それを基幹システムに売上として計上するプロセスです。今回は国内の売上を計上するシステムに関して、自動化を進めました。
相田 「出荷製品の売上を計上するプロセスを分解すると、帳票を集め、基幹システムにログインして手動で入力し、データをセーブして……。といった具合に、1件の売上を計上するのに19ものステップあったんです。それが1日に約400件あるので、これまではオペレーターが3交代で張り付き、午前0時からずっとトラックが出る度に処理をしていました。
このプロセスを、ボットを使って1ステップにしました。結果、オペレーターを一人、別の業務に回せるほど時間を削減できました」
業務を棚卸し、ステップを分解したことで、大幅な時間の短縮に成功した相田。一方で、自動化には別の効果もあったと語ります。
相田 「ボットを稼働すると、エラーがあればすぐにアラートが表示されます。エラーの原因がわかることで改善策を打てるので、業務品質の向上につながっているのも大きいです。これまで見落としていたヒューマンエラーも顕在化され、私たちの気づきにもつながっています」
相田自身も増田と同様、ITについてそこまで詳しい知識は持っていませんでした。そのため開発時には、苦労もあったと語ります。
相田 「開発の終盤で、ボットのテストをやっていたときが一番大変でした。システムエラーが起こる時もありますが、その原因が不明のまま業務が進めば大変な事態になります。エラー情報が出れば、誰が見ても原因がわかり対処できるようにするため、エラーメッセージの出し方なども、コアチームの田中さんをはじめ、各カテゴリーの業務プロセスを熟知しているプロセスエキスパートの方々とも相談しながら進めました。本当に大変でしたが、一方で問題を解決していくおもしろさも感じていました」
相田がアワードに応募したのは、メンバーからの強い推薦があったからですが、苦労しただけに、今回の受賞は非常に喜ばしいもので、次のステップへのモチベーションにもつながっているといいます。
アワードでの自動化への取り組みが意識の変革やグローバルな規模に発展
国内システムの開発に成功した相田は、次のステップとして現在、海外輸出プロセスの自動化を進めています。
相田 「輸出のプロセスは国内以上に複雑ですが、先に国内を手掛けられたおかげで、それを踏まえて検討を進めることができました。自動化の内容は固まったので、開発はこれからが本番。大変だとは思いますが、その分挑戦する甲斐があると思っています」
一方で、増田の所属するオートモーティブ アフターマーケット事業部でも、海外も巻き込んだ活動に発展しています。
増田 「日本で始まった活動ですが、同じような活動が、この事業部のアジアパシフィック全体で広まりつつあります。その意味で今回の受賞は、私自身のモチベーションアップだけでなく、事業部全体のオートメーションを加速させるきっかけにもなっていると思います」
アワードを通してさらに広がりを見せているオートメーションの活動ですが、増田も、相田も、今回のプロジェクトの成功は、自分たちの手で自動化を進められるのだという大きな自信になったといいます。そしてその活動をサポートしてくれた、田中たちコアチームには感謝しかないと語ります。
一方の田中も、現場の努力があってこその成功だとプロジェクトを振り返ります。お互いを信頼し、忌憚なく意見を交わせるボッシュの風土や、“まずやってみる”というボッシュのチャレンジ精神が、多くのオートメーションを実現してきたのです。
2022年6月にセレモニーが終わり、現在は次のステップに進んでいるボッシュのオートメーションプロジェクト。2022年4月から田中と共にアワードの運営を担う豊国は、アワードの未来をこう語ります。
豊国「コアチーム全員が、アワード自体を一過性のものではなく次につながるものにしていきたいという思いを持っています。その意味で、モチベーションをさらに高めてもらえる機会になればと思い、表彰者を称えるセレモニーを6月に実施しました。これを機に、ボッシュのオートメーションが一層広まり、アワードを2回、3回と続いていくものにしていければと思っています」
効率化はもちろん、プロセスの自体の改善や業務の品質向上、そしてチームの一体感をも生み出してきたボッシュの自動化プロジェクト。アワードの開催が、ボッシュのDXをさらに加速させていきます。