メインコンテンツにスキップ
日本のボッシュ・グループ

クリーンエネルギー「SOFC」の事業開発を推し進める、ボッシュの若き挑戦者たち

#チームワーク #グローバル #やりがい #新規事業・プロジェクト #技術・テクノロジー

2024年に工業・産業用燃料電池の本格生産開始することを目指しているボッシュ。いま力を入れているのがSOFC(固体酸化物型燃料電池)プロジェクトです。「SOFCは人々がエネルギーを使いながら生きていくキーテクノロジー」と語る同プロジェクト日本チームの3人が、現在の取り組みや実現したい未来を語りました。

民谷 正浩

民谷 正浩

  • 2007年入社。ディーゼル燃料噴射ポンプの生産技術に携わった後、社内公募にて購買部門プロジェクト管理購買部に異動。排ガスセンサーやリチウムイオン電池新製品など複数の事業部の新規プロジェクトに携わる。現在は、車載向け燃料電池(FCEV)と固体酸化物型燃料電池(SOFC)プロジェクトを兼務。
白井 諒

白井 諒

  • 2022年4月入社。博士学生時代はパワーエレクトロニクスに関する研究を進めながら、インターン生としてSOFCプロジェクト推進室に所属。4月からはJMP(Junior Managers Program)として主に同チームの技術面をリードする。
柴田 悠介

柴田 悠介

  • 2021年入社。前職ではセラミックスの製造技術開発及び研究開発に従事。現在はSOFCプロジェクト推進室に所属し、SOFCスタック内外の部材や開発中のSOFCシステムの技術ディスカッション、日本国内のビジネス分析など、チームが関わること全般をフォローしている。

多様な人材が集まり、多角的な意見を交わしながらプロジェクトを推進

▲ SOFCプロジェクトに参画している3人(左から、民谷、白井、柴田)
▲ SOFCプロジェクトに参画している3人(左から、民谷、白井、柴田)

近年、家庭向けの定置型や車載動力として実用化されており、私たちの生活に使われているエネルギーを環境に優しいものに少しずつ変えてくれている燃料電池。中でもSOFCは発電効率が高く、省エネ性・環境配慮に優れた発電システムとして注目されています。

私たちはいま、このSOFCの工業・産業用タイプの開発に、自動車産業で培った技術力と量産力を活かして取り組んでいるのです。

日本のSOFCプロジェクトチームには、さまざまな部署を横断してメンバーが集められ、その顔ぶれはまさに多種多様。さらに、正社員と複数の大学・大学院から集まったインターン生も加わったメンバーで構成されており、半分以上が外国籍です。

白井 諒は、ドクターの学生としてパワーエレクトロニクスに関する研究を進めながらインターン生としてチームに所属していました。参画前は「学生だと肩身が狭いのでは」と懸念していましたが、「リアルな経験を積めた」と目を輝かせます。2022年4月からは、将来の経営幹部候補を育てるプログラム「JMP」として改めてSOFCプロジェクトに新卒で入社しました。

白井 「小学生の頃からエネルギー問題を解決したいという思いがあり、電力の高効率利用を可能にするパワーエレクトロニクス分野の研究などに取り組んできました。SOFCチームに参画するのは、自らの専門性を生かして日本の電力クリーン化に貢献したいからです。

例えば、SOFCで発電した電力を取り出すインバータ装置の変換効率を1%でも向上できれば、相当な電力損失を防ぐことができます。そういった視点も持ちながら、高性能なシステムをお客様に提供したいと考えています」

車載向け燃料電池とSOFC向けの購買担当としてチームに参画している民谷 正浩は、主にボッシュで内製化するための資材・材料の調達、サプライヤーマネジメント、アジア圏における新規サプライヤースカウティングを担当。新卒からボッシュに勤務しており、社内で横断的なキャリアを築いています。チームでは新たなサプライチェーンを構築するため、日夜奔走中です。

民谷 「特に2021年は、新しい分野のサプライヤーとパートナーシップを組むことに尽力した1年間でした。

サプライヤーと良き関係を構築するためには、ドイツと日本の双方の立場を踏まえて連携する必要があります。ドイツの複数年の赴任経験を活かして、物事が正しいニュアンスになるよう意訳するなど、伝え方を工夫しています」

柴田 悠介は2021年4月に中途入社し、SOFCプロジェクト推進室に所属しています。10年以上に及ぶセラミックス研究及び製造技術の経験を活かして、経験者ならではの技術提言を行っているのです。そのほか、技術面とビジネス面のさまざまな調査やディスカッションなど、チームが関わること全般をフォローしています。

柴田 「私たちのチームは、個人個人に役割があるわけではありません。民谷さんは購買、白井さんは電気系など、それぞれが専門性を持っているので、わからないことはみんなで相談してアジャイル開発のように日々の業務を遂行しています」

新しいエネルギー領域で、フロントランナーとして市場を盛り上げたい

▲ボッシュ東松山工場に展示中のSOFC
▲ボッシュ東松山工場に展示中のSOFC

燃料電池は、簡単に言うと燃料を電気化学的に変換し電気を作り出す装置です。電池という名前から、一般的な二次電池のように電気を貯めて使うと思われがちですが、実際は電気を「作り出す」もの、つまり発電機です。

柴田はSOFCを「クリーンで静かな発電機」と表現します。発電機と聞くと音や煙を出すイメージですが、SOFCは非常に静か。何かを燃やしたり爆発させたりしないので、振動や体に害のある排気ガスはありません。さらに排出される熱が安定しており、一部の家庭用燃料電池ではこの排熱を利用してお湯をつくったりしています 。

家庭用のSOFCが大手企業から数多く販売されている中、工業・産業用が未開拓なのには理由があります。性能面や耐久面はもちろんのこと、特に法規・法令やコスト面において、解決しなければならない課題が多くあるためです。これらの課題を、ボッシュが培った知識と量産技術力で打破したいと考えています。

また現在、市場においては、国内展開のみの企業が多く日本以外では使用不可能な製品がほとんど。そんな中、世界中で使える工業・産業用SOFCの製造を進めているのが私たちです。「魅せる発電機」とは言い過ぎかもしれませんが、オフィスの横に置いても不自然ではないスタイリッシュな外観も実現しています。

加えて発電効率は60%以上と非常に高い数値を記録。一般的な火力発電所は40%ほどであるため、およそ1.5倍の効率。そして、国立研究開発法人NEDOが定めている目標コストを大幅に削減できる見込みです。低コストと効率向上の追求に余念がありません。

柴田 「カーボンニュートラルが求められる一方で、人が生きていく上でエネルギーは欠かせません。SOFCはそんな時代のキーテクノロジーだと思っています。

未開拓の地で進むべき方向を一歩一歩確認しながら進むのは簡単ではありませんが、国内外の多くのビジネスパートナー様と共に市場開拓や技術革新、部品・材料調達などの課題を一つひとつクリアしていくつもりです」

民谷 「工業・産業用をいかに市場に展開するかという部分で、パイオニアになれればと思っています。そのために必要不可欠な材料を、品質・コスト・デリバリーの条件に沿って工場に無事収めることが私の役目。量産に向けて1日でも遅れが生じないように、チーム一丸となって前に進んでいきたいですね」

しかし私たちは、日本の産業用SOFC市場を独占したいわけではありません。すでにさまざまな企業が参入している燃料電池の市場を活性化し、日本のエネルギーの新しい選択肢をつくりたいと考えています。

まずボッシュがフロントランナーとして市場開拓する。そうすることで、日本にクリーンで新しい未来が来ると強く信じているのです。

2024年の市場進出を目指し、 SOFCのプロモーションとサプライチェーン構築

2024年の市場進出を目指し、 SOFCのプロモーションとサプライチェーン構築

ボッシュは日本においてはこれまで、車載向けのコンポーネントビジネスを中心に事業を展開してきました。自動車産業以外の新たな製品の市場進出に取り組む当プロジェクトは、社内ベンチャーという位置付けです。

まだ製品が市場には出ていないいま、私たちが掲げるミッションは「GO-TO-MARKET」。そのために取り組んでいることがふたつあります。

ひとつはSOFCの理解度向上のための技術説明。まずは燃料電池という技術を知ってもらうことが重要です。大学や民間企業、自治体などいろいろなパートナーへ、ボッシュのSOFCについて説明しています。最終的にはイノベーターやアーリーアダプターとなり得るビジネスパートナーに導入検討をしてもらえれば本望です。

柴田 「日本は比較的、燃料電池の認知度が高い国ですが、それでも具体的にどういうものかはあまり理解されていません。燃料電池、そしてSOFCについて理解を深めてもらい、ボッシュ製の何が良いか、買うとどうなるのかまでを知ってもらうことが今後のSOFC普及の鍵になると考えています」

ふたつ目がサプライチェーンの確保。将来的にSOFCの販売数量をどんどん増やしていくには、安定した材料・部品の調達が必須です。日本には技術力が高いサプライヤーが多く存在しています。その中で私たちの想いに共感し、協業してくれるパートナーを探して、良いビジネス関係を築いています。

また2022年2月、ボッシュは新研究開発拠点ならびに都筑区民文化センター(仮称)建設プロジェクトに関する記者会見 を開催しました。新しい本社となるこの新社屋には、都市ガスで稼働するSOFCをテスト導入する予定です。

ボッシュがアジア太平洋地域の拠点にSOFCの採用を決めたのは、この横浜の施設が初めてのこと。2024年のオープン時に発電の実証運転を開始し、2026年には最大数百kWまで拡大することを視野に入れています。

私たちにとって初めてのSOFC導入ということもあり、将来的にさまざまなパートナーのみなさんに見学に来てもらいたいと考えています。なので該当する法令や規制をクリアしながら、SOFCをよく理解してもらう施設にするにはどのように設置したら良いか、チームメンバーや新社屋を建設するチームと共に考えながら導入準備を進めているのです。

弊社ドイツのヴェルナウ工場とSOFCスタックを生産するバンベルグの中央バスステーションではすでに実地運用を開始しています。ドイツ側とも連携してそのノウハウを活かし、土台を固めながら一歩ずつ前進して参ります。

多くの人の期待に応えるSOFCで日本、そして世界を変えたい

ボッシュは135年もの長い歴史の中で、人とクルマの安全を考えて世界有数の企業になりました。そしていま新しい一歩を踏み出し、人と社会に革新のテクノロジーを発信しようとしているのです。

現在、ボッシュのSOFCはドイツだけで製造されています。前述の新社屋でのSOFC導入をきっかけにSOFCが日本で普及すれば、日本で製造することも選択肢に入ってくるでしょう。すると、環境に優しい高効率発電機SOFCの輸送によるCO2排出が大幅に減少し、より地球に優しい装置になります。

民谷 「SOFCは、これからのエネルギーセクターにおいて非常に重要で、ボッシュの複数あるメイン事業のひとつになっていくことでしょう。

世間では産業用のSOFCは『いつになったら市場展開されるのか?』という声をよく耳にします。その期待を裏切らないように、ボッシュが先駆者になり確実に2024年に量産を始め、ヨーロッパ、日本、そして全世界へと展開していくつもりです」

グローバルに取り組んでいるボッシュのSOFCプロジェクトは、多くの会社が期待してくれており、世の中が必要としている技術を体現しようとしているもの。正しいステップを踏んで、顧客はもちろん、ボッシュを支えてくれる方々みんなが応援したいと思える製品を世の中に出したいと考えています。

白井 「ボッシュとしても、本気でチャレンジしているプロジェクトです。メンバーの私たちは毎日のように壁にぶち当たりますが、それをみんなで協力して乗り越えていくことに大きなやりがいを感じています」

柴田 「前職では社内で完結する業務が多く、その取り組みが世の中に役立っているかどうかわかりませんでした。けれどいまは、メンバーと一緒に社外にどういうアクションをするか協議して、その内容が実際にアクションになり、お客様に届けることができます。プレッシャーもたくさんありますが(笑)、それは面白さのひとつ。もっと頑張りたいと思えますね」

ボッシュのSOFCが、きっと日本を、世界を変える。メンバーと多角的な意見を交わしながらつくっているからこそ、そう思えるのです。未開の地を進むのは簡単ではありませんが、3人のチャレンジャーは今日も全力で走ります。

お問い合わせ:

SOFC.Japan@jp.bosch.com

共有オプション: