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日本のボッシュ・グループ

階層を超えて若手社員が参画、ボッシュの2030年に向けたビジョン

#チームビルディング #リーダーシップ #ビジョン

2030年までに日本のボッシュ・グループが目指す姿としてまとめた「ビジョン」。このビジョンがこれまでと大きく違うのは、経営側発信ではなく、組織横断的に集まった若手メンバーも中心となり作成した点。プロジェクトに参加した大宮 拓馬と溝上 祐里子がこれまでの取り組みやビジョンの狙いを語ります。 ボッシュ株式会社

突然の電話から始まった、会社の新たなビジョンをつくるプロジェクト

突然の電話から始まった、会社の新たなビジョンをつくるプロジェクト

2019年11月に行われた定例の役員会で、デジタリゼーションやダイバーシティの推進など、ボッシュが今後フォーカスすべきトピックについて議論されていました。

激変する時代や社会に合わせ、ボッシュの事業としても推進をしていきたいAIやIoT(AIoT)、デジタルトランスフォーメーションなどに基づくビジョンに変える必要があるという結論に達しました。

そこで、その場に参加していた、シャシーシステムコントロール事業部のエグゼクティブオフィサーである松村 宗夫がリーダーとなり、2030年に向けたビジョン策定のプロジェクトチーム発足が決定しました。当時を松村は次のように振り返ります。

松村 「自分が所属するビジネスユニットで比較的広い領域を見ていたこともあり、ドイツや他国のストラテジーと日本の温度差を感じていました。

そもそも日本のボッシュの存在意義はなんだろうか?そんなことを自問自答していく中で、これは自分や周囲だけではなく、これからの未来を背負って立つ若手メンバーも含めて議論をする必要性を感じました」

2015年に入社し、シャシーシステムコントロール部のエグゼクティブアシスタントを担当していた大宮 拓馬は、突然のオファーに最初は驚いたと言います。

大宮 「メンバーの選定では、ビジョン策定に参加している役員が、自分の部署の所属ではない若手を一人選ぶという流れになったそうです。その中で僕が指名された話を聞きました。

松村さんとは同じ事業部だったので『大宮さんがいいんじゃない?と推薦されているんだけど、挑戦してみる?』と聞かれ、引き受けたのが始まりでした」

同じころ、当時入社2年目でモーターサイクル・パワースポーツ事業部で広報を担当する溝上 祐里子のもとにも役員から電話がありました。

溝上 「“リーダーシップ全員発揮”という社内プロジェクトでお世話になっていた役員から、いつも突然電話がかかってくるんですが、今回も『一緒にビジョンを作らないか?』と唐突に誘われて。

最初は驚きましたが、内容を伺うと日本のボッシュ・グループの目指すべき方向を知る良いチャンスだと思い、『やらせてください』と即答でした」

大宮も溝上も、プロジェクトへの参加を決めた動機は、当初は信頼を寄せる役員からの依頼という部分が大きかったと口を揃えます。このプロジェクトへの参加をきっかけに、二人のビジョン、そして会社に対する意識が大きく変わっていったのでした。

若手やマネージャー、役員が階層を越えて集まって白熱した議論

若手やマネージャー、役員が階層を越えて集まって白熱した議論
▲2020年1月に実施したワークショップ

こうして各所から参加者が招集され、2030年に向けた日本のボッシュ・グループの未来を考えるプロジェクトがスタート。最初はアイデアを出すための土台作りとして、講師を招いた勉強会や他社ビジョンの研究が行われました。

同時に参加メンバーが所属部門に帰り、周囲の従業員が業務の中で何に喜びやモチベーションを見出しているか、また日本のボッシュ・グループに感じている不満などのヒアリングも実施。それらの内容をもとに議論を重ねていきました。

大宮 「メンバーは若手中心でしたが、入社1~2年目の社員からマネージャークラスまで、幅広い層が参加していました。ほとんど面識のない者同士でしたが、役員も参加する中でも参加者の多くは当初から積極的に発言していて活気がありましたね」

溝上 「大宮や私のような間接部門だけでなく、プロジェクトメンバーは営業や製造、設計の方まで幅広かったですね。

工場などはロケーションの関係もあって、こうした全社プロジェクトになかなか参加しづらい環境だと思うのですが、今回は幅広い意見を聞くために、本当にさまざまな組織からメンバーが集められたのだと感じました。役員も新人も、階層を超えて本音で話し合える雰囲気で、フラットでオープンな意見交換が行われていたと思います」

ただ、多様な人材が集まりオープンな議論をしているからこそ、一人ひとりのアプローチも違い意見はバラバラ。議論を収束させようとしても、そもそものビジョンの定義など、根本的なところで躓いたり、衝突したりと、なかなか話はまとまりませんでした。

しかし溝上は、その混沌とした議論の中でも得るものがあったと語ります。

溝上 「大変でしたが、これだけの少人数でも意見が分かれることが、新鮮で面白かったです。突き詰めて考えるときりがない中、締め切りをにらみながら、アイデアを取捨選択し、形にしていくマネージャークラスの方々の底力も垣間見た気がします。本当に勉強になりました」

一方大宮は、この議論を通してビジョンに対する考え方が変化していったと言います。

大宮 「僕自身、これまでのビジョンに対しては、心のどこかで、抽象的すぎて自分たちが何をすれば良いのかよくわからないという考えがありました。ただ実際に取り掛かると、具体性を高めれば高めるほど反発が起こり、どうしてもビジョンは“ふわっとしたもの”になります。

ビジョンを具体的な考えや行動に落とし込むのは、最終的には部署やグループ、そして僕たち一人ひとり。ワークショップを進めながら、考えが整理されていきました」

日本のボッシュのビジョンが誕生

「ビジョン」プロジェクトチームはその後、グループに分かれワークショップの議論をもとにした具体案を検討。その提案を分類したり組み合わせたりしながら、最終的なメッセージに落とし込んでいきました。溝上は、この活動の中でも新しい気づきがあったと言います。

溝上 「マネジメントメンバーの提案を伺うなかで、日本に留まった視点ではなく、世界のボッシュグループの中での“日本”という視点で物事を見ていることに気づきました。

日本の強みや可能性を、本部であるドイツにどう示していくのか、あるいは日本社会にボッシュとして何を還元していくのかという、大きなスケールで組織を見ていたのが印象的でした」

通常の業務内ではあまり感じることのなかった視点だけに、ビジョンはもちろん、日々の業務にもこうした広い視野が必要なのだということを改めて感じたと言います。

こうして2020年春には「人と技術で未来をつなぐ ~持続可能な発展に向けて~」という新たなビジョンが誕生。重要領域となる「革新と成長」「私たちの強み」「人と文化」や、それらに紐づく重要項目も同時に策定されました。

大宮 「僕自身このプロジェクトに関わって感じているのは、良い意味で、特定の誰かが作ったものではないビジョンができたことです。

若手の閃きで思いついたものでもなく、上層部の役員の方が考えたものでもない。誰かの意思が強く反映されたものではなく、日本のボッシュ・グループのものとして存在するビジョンになったと思っています」

若手からマネジメント層まで二十数人が、納得できる部分、納得できない部分も含めて喧々諤々議論した結果、バランスの取れたビジョンになったと大宮は自信を見せます。

全社一丸で目指す絶対目標ではなく、一人ひとりの考えや行動の基準として

完成した「ビジョン」は、その後ビジュアルなどが付加され、2020年12月に社内で発表。現在は、ビジョンに紐づく三つの重要項目にそれぞれ役員がアサインされ、プロジェクトの再編など、実際のアクションにつなげる動きが始まっています。

溝上 「社内イントラのブログや活動報告を見ていると、新たなビジョンに対してリフレッシュして再出発しようという機運が高まっているように感じます。

ただビジョンは、パッと出して何かが突然変わるようなものではなく、組織内で咀嚼し、地道に業務の中に落とし込んでいくものだと思います。なぜ変えたのかを全社員に理解してもらうためには、まだまだ時間と労力をかける必要があります」

ビジョンの誕生がゴールではなく、これから全社員の手で完成させていくものだと溝上は考えています。また溝上が、咀嚼し、落とし込んでいくといったように、大宮もこの新たなビジョンをツールとして活用してほしいと考えています。

大宮 「今回僕たちプロジェクトメンバーでまとめたビジョンは、それを目指して全社一丸となる絶対的目標というよりは、自分たちの働く意味や目指す方向を考えるツールのような位置付けだと思っています。

これがあるから、自分が道を見失わなかったり、働くモチベーションが保てたりする。そんなふうに、一人ひとりにうまく使ってもらうことが大切だと思っています」

布教活動のようにビジョンを浸透させるのではなく、個々が働く上でのベースにビジョンを置いてもらうことが、このビジョンの意義だと語ります。

溝上 「上から言われたからやるという受け身の姿勢では、結局よく分からないまま終わってしまいます。一人ひとりが主体性を持って、ビジョンを自分のものにしていくことが大切。

ビジョンをもとに自分で考える文化がもっと当たり前に根付くと、この変化の激しい時代のなかでも、より発展性のある組織になれるのではないでしょうか」

大宮 「僕がイメージしている日本のボッシュ・グループの向かうべき姿は、ライバルであるどの外資系企業よりも自分たちが為すべきことに対してイニシアチブをとれる企業です。その意味で現状、日本のボッシュ・グループは他社より一歩先を進んでいると思います。

ただ日本だからという理由で限界を決めてしまっている部分も少なからずあるはずです。日本にいることを常に強みとして誇りを持つためにこのビジョンが役に立てばうれしいですね」

一人でも多くの社員が、日本のボッシュ・グループで働いているとこに誇りを持てる。そんな会社になるための道標として活用してもらうことが、このビジョンの存在する意義だと二人は考えています。

会社の思いを一方的に従業員に背負わせるのではなく、一人ひとりがその意味を考え、行動するためのものとして生み出された「ビジョン」。一人ひとりがこのビジョンを自分のものにしたとき、目指す未来が形となり実現するのでしょう。

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