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日本のボッシュ・グループ

従業員の安全とビジネスの推進を両立。コロナ禍におけるボッシュの改革とは?

#働き方改革 #テレワーク #バックオフィス #ニューノーマル

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。働き方を見直す企業は数多くありますが、ボッシュもそのひとつ。コロナ禍での日本のパワートレインソリューション事業部ECUシステム事業の継続に努めたエンジニアリングサービス統括部長の安藤肇、ゼネラルマネージャーの齋藤岳史がこの6カ月間の取り組みを振り返ります。

“セーフティファースト”を掲げて安全にビジネスを回せる体制づくりを実行

パワートレインソリューション事業部 ECUシステム事業室 エンジニアリングサービス統括部長の安藤肇
▲パワートレインソリューション事業部 ECUシステム事業室 エンジニアリングサービス統括部長の安藤肇

世界各国で多くの感染者を生む新型コロナウイルス。ボッシュもその影響を受け2020年2月ごろから従来の働き方を見直します。ただし、働き方は変化するもビジネスは回し続けなければなりません。前例のないプロジェクトが動き出そうとしていました。

安藤 「ボッシュは全世界のネットワークを使って開発をしているので、どこかの拠点に影響が出ると、他の国でのビジネスに直結します。海外の状況を見ながら、『これは日本も動かないとまずい』ということで、誰に言われることもなく立ち上がったのが始まりです」

世界60カ国以上に拠点を持つボッシュでは、さまざまな文化背景を持つ社員が集まり、それぞれで働き方が異なります。安藤は比較的出勤の必要な業務が多かったのに対し、齋藤はほとんどの仕事をテレワークでこなせる業務環境でした。

安藤 「私が担当している職務領域はエンジンや車両などの性能の設定。そのために車を実際に現場で見ながら業務を行わなければならずテレワークへの移行が難しかったです」

齋藤 「私はシステム開発に携わっているので、ほとんどの業務はテレワークでの推進が可能でした。ただ、一部の開発業務では現場でないと進められないものがあるので、一気にすべての業務をテレワークに、とは考えにくかったです」

もともとはオフィスへの出勤が当たり前だった環境の中で、突然テレワークへの全面移行を進めることに。世界全体の潮流を捉え自然発生的な流れでテレワークへの取り組みを始めたものの、そこにはマネージャーとしての使命感もありました。

齋藤 「新型コロナウイルスの話を耳にするようになったのが1月末ごろのこと。しばらくは対岸の火事という感覚もありましたが、ロックダウンの話も聞いていたので、“What happens if(何か起きたらどうするんだ)”の精神で部下とビジネスを守ろうと動き始めた覚えがあります」

安藤 「これほどまでに長く、深刻だと当時は思っていませんでしたからね。ただ、状況を鑑みてまずはセーフティファーストの考え方のもと、部下の皆さんが安心して業務に取り組める環境を整えることに重きを置きました」

6カ月間で3つのフェーズを渡りながら業務環境を移行

6カ月間で3つのフェーズを渡りながら業務環境を移行

今回の業務改革における具体的なフローは3段階に分かれています。第1フェーズではホームオフィス率の向上を、第2フェーズでは交代制の出勤ルールの導入、第3フェーズではソーシャルディスタンスを保ったオフィスづくりを行いました。

齋藤 「最初に取り組みを始めたのは2月。中国・武漢のロックダウンのニュースを聞いて、日本にもそういった日が訪れるかもしれないと危機感を抱いたためです。当時は出社している部下にヒアリングを行いながらマネージャー陣でテレワーク化に向けて動いていました。

3月31日には丸一日かけてワークショップを行い、本格的なテレワークのしくみづくりを検討しましたね。その翌週から実際にテレワークを国内では全社的に導入して、さらにその翌週にはホームオフィス率を一気に80%まで引き上げることに成功しました」

安藤 「このときは“いかにオフィスに来させないようにするのか”が最上位課題。ですので、会社にいないとできない仕事はオフィスにいる誰かにお願いするか、マストでない仕事ならばやらない、と必要な業務を取捨選択するフェーズでした。進行が難しい仕事に関しては、プロジェクト全体のスケジュールを調整して組み替えていましたね」

ECUシステム事業ではオフショアの開発として、インドやベトナムの開発者と共にプロジェクトを進行する土壌ができていました。ホームオフィス率の急激な上昇には、これまで積み上げてきたオンライン上でも業務を進められる組織能力の高さがあったのです。

齋藤 「もともと私たちには日常的に海の向こうに暮らすメンバーと開発を進める、バーチャルチームというしくみがあります。だからこそ、ホームオフィスに対する抵抗感がなくスムーズに移行できましたね。自宅でも仕事の進め方が変わらないのはわれわれの強さだったと思います」

安藤 「フェーズ1のタイミングで印象的だったのは、部下の皆さんがわれわれの意思を理解しようとしてくれていたことです。世の中的にも世界的にも正解のわからない状況下でなんとかスムーズに事業も業務も進めようと思い、決断したしくみだったので、不完全ながらも理解して連携しながら働いてくれていたように感じます」

フェーズ2では社員をAとBとのチームに分け、1週間ごとの交代制での出勤ルールを適用。オフィスでないと進まないことでストップを余儀なくされた業務も推進できるような体制をつくりました。

安藤 「正直、このフェーズが働く上では一番難しかったです。出勤して良い週とダメな週が生まれるので、仕事の流れがブツブツ切れてしまうためプロジェクトの進行が大変で。マネージャーが日々、スケジューリングと出退勤管理を徹底していました」

齋藤 「オンラインでの仕事に慣れているとはいっても、やはりオフィスで毎日顔を合わせられるほうがスムーズだと感じる場面は多々ありました。細かい表情や感情の変化が見えないため、精神的なサポートができないのも大変でした。ただ、話せる時間が減った分、業務開始前の時間に15分ほど朝礼の時間をつくってコミュニケーションを補完していましたね」

日々の業務における課題は常に改善を重ねる一方、評価対応は既存のしくみを変えずに進めることに成功。成果主義になりすぎないボッシュの根幹の姿勢が功を奏しています。

齋藤 「外資系なので完全成果主義のイメージを持たれることも多いですが、比較的対話(ダイアログ)重視なんですよね。日々のコミュニケーションさえしっかり取れていれば評価は可能なしくみづくりを行っていたので、苦労はありませんでした」

そして、フェーズ3の2020年10月現在ではチーム制を廃止し、ソーシャルディスタンスを確保したデスク配置に変更。週ごとに着席可能な座席を決めて着席するルールへと移行しています。ホームオフィスでの勤務が可能な場合はテレワークで業務を推進し、出社が必要な場合でも細心の注意を払えるしくみに。刻一刻と変化する状況に合わせてこまめな制度の立て直しを今もなお行っています。

直面した危機をも乗り越えていけるのが良いチーム

パワートレインソリューション事業部 ECUシステム事業室 ECUプロジェクト統括一部 ゼネラルマネージャーの齋藤 岳史
▲パワートレインソリューション事業部 ECUシステム事業室 ECUプロジェクト統括一部 ゼネラルマネージャーの齋藤 岳史

約6カ月間の運用を重ねる中で安藤、齋藤が部下から受けたフィードバックは実にポジティブなものばかり。互いに理解を深めることで危機を乗り越える体制も醸成されています。

安藤 「われわれが思案したことをくみ取ってくれている部下が多いのかなと思います。チーム制にしても、座席配置の変更にしても、あくまでも感染者を生まない・広げないことを念頭に置いたしくみなので。ただ、もちろん今まで通りスムーズにいかないことも多いので、元に戻してほしいと感じている点もあるようには感じます」

また、長い期間を通して改善を重ねてきたからこそ見える課題も多い、と齋藤。その筆頭には新人教育や海外での最終的な品質評価などが挙げられます。

齋藤 「働く上でスムーズだと感じるときって、文脈の共有がしっかりできているときだと思うんです。そしてそれは、従業員同士のコミュニケーションや雰囲気を知ってこそ成立するもの。ところが、この状況下では必然的に文脈共有は難しくなってしまいます。

海外で働くメンバーも、今までは日本に来てもらったり、我々が渡航して仕事をしたりしていましたがそれもしばらくはできないですからね。これに関してはまだ実際に影響は出ていないのですが、今後そういった自体は起こりうるでしょう」

安藤 「あとは、衛生面に関する問題意識を常に持ち続けることも今後の課題として生まれてきつつあります。“まあいいか”と思って対策を緩めてしまうと足元をすくわれると思うので。今後も気を引き締めて取り組んでいきたいですね」

ホームオフィス化を実行したことでオンライン上のコミュニケーションのみで業務を引き継いだり、ノウハウシェアを行う環境も少しずつ生まれてきました。苦しい6カ月間でしたが、この期間を通して得たものは大きいとふたりは語ります。

齋藤 「たった1週間でホームオフィス化を8割達成できたこと、業務が継続できていることを考えると、とても戦闘力の高いチームなのだなと思います。あらためてわれわれのチームの練度を見つめ直す良い機会にはなっていますね」

安藤 「私もこういったクリティカルな環境下で部下の皆さんが連携しながら働いている姿を見てとても驚きました。みんなに明確に進むべき方向を共有できていたのだと思い、誇らしくなったといいますか。

ただ、こういった働き方がニュースタンダードになると、プロジェクト上で難しい点や進行しづらいことなんかが出てくると思うんです。そういった弊害に一つひとつ対応しながら、より働きやすい環境をつくりたいですね」

未来にもつながる“ニューノーマル”の醸成に向けて

未来にもつながる“ニューノーマル”の醸成に向けて

3つのフェーズを経て、従来とは異なる働き方を取り入れることに成功したボッシュのECUシステム事業。今後は、ニューノーマルとして定着しつつあるこのスタイルをより強固なものにし、働きやすいしくみをつくっていきたいと安藤は言います。

安藤 「新型コロナウイルスもセカンドウェーブ、サードウェーブと波が来ると言われています。それらに対処するために、今つくり上げた体制を維持しながら働き続けたいですね。さらに大きなプロジェクトが舞い込んでも難なくこなせていたらいいな、と」

齋藤 「これまでの6カ月間では既存ビジネスをデジタルトランスフォームすることのみを意識してきました。今後は新規のビジネスに関しても、現在の体制を維持したまま取り組みたいと考えています。事業と組織をオンライン上でゼロから立ち上げられるようになれば、ホームオフィス下でも無理なくより大きなビジネスを回していけるようになるはずですから」

もともとデジタルトランスフォーメーションへの意識は強く持ち続けていたものの、タイミングの後押しを受けて全面的に移行したことで見えた課題や改善点などがありました。それらを適切に修正しながらPDCAを回すことが、直近の取り組みでの重要事項です。

安藤 「セーフティファーストの考えが一番なのは今後も変わりません。従業員の安全を守りながら、ビジネスを拡大する。このシンプルな目的達成のために今後も活動を続けます」

めくるめく状況が変化する今の世界の中で、どのようにビジネスを拡大しながら働きやすい職場をつくるのか。新しい時代に突入した今こそ、ボッシュはこれからも試行錯誤を繰り返しながらニューノーマルを生み出します。

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