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日本のボッシュ・グループ

ボッシュのシニアに特化した人材派遣。定年後も働きがいのある環境を提供

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定年退職後も今まで培った知識や技術、経験を有効に活用してもらうため、2010年に始まった社内外への人材派遣制度「ボッシュ マネジメント サポート(BMS)」。現在この活動を統括する大西 一夫と、制度を活用して新たな業務に取り組む池田 和美が、制度の目的やビジョン、定年後のキャリアについて語ります。

定年後の新しい働き方を提案するグローバルな取り組み

人材派遣制度「ボッシュ マネジメント サポート」を統括する大西
▲人材派遣制度「ボッシュ マネジメント サポート」を統括する大西

ボッシュ マネジメント サポート(BMS)は、BMSドイツを筆頭に世界10カ国で運用されているグローバルな取り組みで、日本では現在、大西がセクションマネージャーとしてこの活動を統括しています。

大西 「BMSはボッシュグループのダイバーシティ戦略の一環として、定年退職された社員を対象に設立された制度です。現役時代にさまざまな知識や技能、経験を培ってきた社員が、定年とともに会社を去ってしまっては、本人にとっても会社にとっても大きな損失になります。

お互いにリソースを有効に使える新たなビジネスモデルを構築しようと考えたのがBMS設立のきっかけです。ドイツ本社で、現状の社内ルールに照らし合わせながら、即戦力として活躍してもらうための仕組みを検討した結果、現在の登録型の社内派遣という形が誕生しました」

ボッシュでは、BMS設立以前も一般的な雇用延長制度がありましたが、BMSができたことにより、定年退職者の選択肢はより広がりました。現在は定年後のキャリアとして、雇用延長制度と派遣型のBMSに加え、各事業部と個別に契約する嘱託の3つの仕組みから、自分に合った制度を選択できるようになっています。

大西 「雇用延長や嘱託制度は、多くの企業がそうであるように、もとの部署で業務を継続する形が一般的です。一方BMSは、定年退職者の持つ知識や技術を必要とする部署に、組織の垣根を超えて人材を派遣する形を取ります。そこがこれまでの定年後の働き方と大きく違うところです」

BMSを利用する際には、まず本人が自身のスキルや経験、性格などをBMSのデータベースに登録。人材を求める事業部の担当者は、そのデータベースにアクセスし、必要な人材の候補を選定します。その後、登録者と事業部の担当者、BMSの三者で面談を行い、業務内容をはじめ雇用期間や給与などの条件が合えば契約成立となります。

大西 「われわれは登録者を“BMSエキスパート”と呼んでいますが、このエキスパートと依頼者とのマッチングが大きな業務の一つです。また雇用契約をはじめ、給与やその他費用の請求・支払いといった経理業務、当局への申告などは社内関係部門と協力して行います。また運営上の予算管理やBMSのPRなどもわれわれの仕事です」

設立から11年。BMSではこれまで200件以上のプロジェクトに人材を派遣しており、派遣要請のあるプロジェクトも毎月増えています。

大西 「本当に多種多様なプロジェクトから依頼が来ます。代表的な例では、新社屋の建設プロジェクト、全社のITシステムの更新や大型試験室の新設、テストコースの拡張プロジェクトなど。こうした案件には、専門スキルや経験、調整能力に長けた人材が求められます。エキスパートである社員が、これまでのご自身の経験やスキルを活かせる場はたくさんあると思います」

さらにBMSでは、労働者派遣事業の許可も取得し、この4月からは社外への派遣に向けて準備を進めています。

大西 「社外への派遣については、これまでもグループ会社からの要望はあったのですが、法的な問題で不可能でした。今回ライセンスを取得したことで、グループはもとよりグループ外の企業にも派遣が可能になりました。エキスパートの方たちにとっては選択肢がさらに広がり、活用いただける雇用側にとってもプラスになる取り組みになると確信しています」

BMSで得た知識や経験をもとに、新たな仕事にチャレンジ

制度を活用し、ボッシュトレーニングセンターで講師を務める池田
▲制度を活用し、ボッシュトレーニングセンターで講師を務める池田

このBMSを利用して、定年退職後に新たなキャリアを積み重ねているのが池田 和美です。池田自身、退職直後こそもとの部署で通常の業務や後進の育成を行ってきましたが、現在はスキルを活かしながらも、人生で初めての業務に携わっています。

池田 「今年の1月から、人事部の下にある社内研修を管轄する部門のボッシュトレーニングセンター(BTC)で講師をしています。研修内容は、ハイブリッドや電気自動車など電動化関連です。自動車業界が大きく変わろうとしている今、技術者だけでなく、それ以外の社員にも電動化の知見を広め、この大きな変革をボッシュの強みに変えていくのが狙いです」

今でこそ電動化の講師をしている池田ですが、退職時に在籍した部署はCVTベルトの開発。実は電動化の知識は、BMSの派遣先で培ったものだと言います。

池田 「在職時も電動化についての最低限の知識は持っていましたが、それほど深く携わっていたわけではありません。BMSで2つ目の派遣先となった、電動化モーターの開発プロジェクトに参加したことで、電動化に関するスキルが身につきました」

そのプロジェクトの後、池田は品質保証の部門と契約。その部署の上司の依頼が、電動化の講師を務めるきっかけになります。

池田 「当時の上司から、『電動化の製品が立ち上がった際、品質保証のメンバーへお客さまのサポートのために、電動化の知識を研修スタイルで伝えられないか』と依頼がありました」

講師をするにあたり池田は、それまで断片的だった自分が持つ電動化の知識や経験を体系立てて整理し、研修に臨みます。

池田 「ただそのときに、この研修は品質保証だけではなく、生産技術や製造、あるいは営業にも必要なのではないかと感じました」

もっといろんな部署に電動化を広める必要があるのではないか。池田はBMSの担当者にもこの研修の必要性を伝え、それがきっかけで、全社員が対象となるBTCでの社内研修がスタートしました。

一人のエキスパートの発案が、全社的な案件に発展する。まさに退職者がそのスキルを活かして活躍でき、会社にもメリットをもたらすというBMSの目的に合致した活動となったのでした。

定年退職後に生まれた新たなやりがい

定年退職後に生まれた新たなやりがい

このようにBMSを活用して活躍している池田が、退職後のキャリアを考え始めたのは、定年を5年後に控えた55歳のころでした。

池田 「先輩でBMSに登録していた方がいて、その人からいろいろ話を聞きました。あとは再雇用制度についても調べましたね」

悩んだ末にBMSを選んだ池田。決め手となったのは、違う仕事にもチャレンジできるという点も大きかったと言います。

池田 「自分としてはまだ体力も気力も多少はあったので、当初は恩返しで自分の知識を残していくよりも、まだまだ現役として仕事がしたいという意識の方が強かったです。そうした背景があり、定年後でも違う仕事に就ける可能性があるというのは魅力的でした」

ただ、退職当初こそ現役と変わらない仕事がしたいと思っていた池田ですが、BMSで経験を重ねるにつれ、その心境にも変化が表れてきたと言います。

池田 「意識が変わったのは社内講師をやるようになってからです。それまでは、後輩を育てる立場ではあるものの、目の前にあるプロジェクトを成功させるという、定年前と同じやりがいの方が大きかったですね。

今は電動化の知識を広めることで、多くの人が『よく理解できた』とか『仕事に活かせる』といった反応を返してくれる。そこにやりがいを感じています。また自分は開発出身ですが、開発以外のことをやると仕事の幅も広がります。この歳になってそこにもおもしろさを感じています」

2021年現在、200名近い登録者がいるBMSですが、ほとんどのエキスパートが、池田のようにこの制度の魅力を感じていると大西は言います。

大西 「実際に、この制度を利用した方々は概ね満足されているようで、『継続して働きたい』といった声もあがってくるようになっています。

ただ一方で、運営として課題を感じている部分もあります。タイミングが合わず、エキスパートの方が働きたいのに働けない場合や、事業部が希望する人材が他の業務についており、最適な人材をマッチングできない場合等があります。現在は手作業でマッチングを行っていますが、そこは改善の余地があると考えています」

さまざまな価値観や働き方、生き方に対応できる仕組み

さまざまな価値観や働き方、生き方に対応できる仕組み

マッチングの課題の改善も踏まえたうえで、大西は運営側の今後のビジョンをこう語ります。

大西 「今後は業務のDX化、ITを使った形での効率化を進める予定です。そのうえでBMSの認知度をさらに高める活動も加速させたいです。退職者の方にBMSを活用いただくことはもちろんですが、BMSを広く知っていただくことで、定年退職後の自身のキャリアについて早期から考えるきっかけにしてほしいですね。

また人材を求める事業部のマネージャーたちにとっては、自分たちのタスクを達成するための有効な手段であるとともに、ジェネレーションダイバーシティの観点でもBMSを活用してほしいと思っています」

また当事者としてかかわる池田は、定年後のキャリア形成について後輩たちにこうアドバイスします。

池田 「現役のうちは退職後をイメージしづらいと思いますが、BMSは退職間際でなくとも登録が可能です。またボッシュには現在、退職後の選択肢が三つありますので、できるだけ早いうちから自分の将来を考えてほしいですね。

私自身はまだまだチャレンジしたいので、自分としては70歳位までBMSで仕事を続けたいと考えていますが、安定を考えるなら65歳まで仕事が保証されている雇用延長制度もあります。それぞれのメリット・デメリットを知り、自分に合っている働き方を選ぶことが大切だと思います」

大西 「BMSとしては、エキスパートの社員ひとりひとりが活躍できる場をどんどん提供していきたいと思っています。社外派遣はもちろんですが、ゆくゆくはBMSのグローバルな体制を活かして海外とも連携していきたい。多様な働き方を提供することで、定年退職後も新たなやりがいを見つけてもらえる制度にしていきたいですね」

設立から11年を超え、BMSは社員のさまざまな価値観や働き方、ライフスタイルに対応できる仕組みとして、さらなる進化を続けています。

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